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Metal Butterfly誕生のきっかけ~第3話~

バーのおしぼり

きっかけが訪れたのは突然でした。

サプールの存在を知ってから2年後のある日、いつも通い詰めているバーでお酒を飲んでいた時のことでした。

手持ち無沙汰になった時に誰しもがよくやるように、手元にあったおしぼりを何気なく手に取り、畳んでは広げ、また畳んでは広げ。そんなことを繰り返している時に偶然おしぼりが蝶ネクタイのような形になったので、店主に「ほら見て。おしぼりの蝶ネクタイできた!」などと言っていた時に、

 

「あっ!」

 

と思いました。

 

「アルミの板で今みたいな加工をしたら、蝶ネクタイになるかも知れない!」

 

翌日、会社に到着するなりスタッフみんなを集めて、

「アルミで蝶ネクタイが作れそうな気がするから、ちょっとやってみよう。」

と話しかけると、みんな口がポカンと開いた状態。

 

「また専務が変なこと言ってる、、、」

 

そんな空気も漂う中、まず私がおしぼりから蝶ネクタイを思いついた経緯を説明し、具体的にどんな風に加工すればカタチになりそうかのイメージを伝えた上で実際に取り掛かって貰いました。

その時期はちょうど仕事のスケジュールにも余裕がある時期だったので試作はどんどん進み、昼前にはそれらしきモノの原型が出来上がったのです。確信をもった私はすぐにクラウドファンディングに挑戦することを決めました。

初期に作った試作品は今のような蝶の形ではなく、もっとシンプルなものでした。

こちらはその1か月後に作った2回目の試作。表面処理を塗装にすることすらまだ決まっておらず、アルマイトの2色がけでグラデーションがどこまで表現できるかのテストをした時の物です。

ジリ貧状態の経営から自社商品を夢見るようになり、結婚していく仲間に自分の技術を生かしたギフトを贈りたいと思うようになって、サプールの存在を知り感銘を受けてファッションアイテムに的が絞られ、最後はバーのおしぼりで蝶ネクタイに辿り着く。

こうした経緯を辿ってMetal Butterflyは誕生しました。


その半年後、2018年の8月から10月まで「Makuake」でクラウドファンディングに挑戦。多くの方々から目標額の170%を超える温かいご支援を受け無事ゴールすることができました。

そして翌年、完成したMetal Butterflyを携えて私は初めてのアフリカ、サプールがいるコンゴへと向かいました。

Metal Butterflyという私たちの物語の第一章は、実際にサプールに会うところまで絶対に行こうと決めていました。
Metal Butterflyが完成した時、これはもう行くしかないと思いました。

 

サプールという存在に衝撃を受けっぱなしのままではいられなかった。

彼らから受けた衝撃を、私たちは私たちなりのアウトプットでカタチにしました。
よくわからないけれど、これで彼らと一緒に靴底を鳴らしてステップが踏めると思ったし、踏むからにはもうトコトン踏んでみようと思いました。

そして2019年4月28日、コンゴ共和国の首都ブラザヴィルで見事にサプールと対面し、彼らにMetal Butterflyを手渡すことができました。それはとても素晴らしい出会いだったし、今では彼らは私たちのビジネスパートナーです。
私たちは「支援」ではなく、彼らと共にビジネスをスタートさせようと思っています。

エピローグ

最後に。

父との関係性は今はどうかという話ですが、父は僕にとって大切な家族であり、またビジネスパートナーでもあります。彼の長所と短所を全て受け入れ、私にない領域の情熱を持ち続けていることに対し最大限リスペクトしています。そして私は私で自分と仲間の可能性を信じ、その可能性を開くことに情熱を傾け日々の仕事に取り組んでいます。

人と物事を上手くやっていくためには、相手の変化を待ったり変化するように仕向けたりするのではなく、相手を信じて自分から変化していくことが大切なんだ、ということも知りました。

私には、私の人生の「役目」がある。あるいは「使命」と言えるかも知れません。それを見つけることができたのは幸せなことだったし、それが具現化したものがMetal Butterflyなのかも知れないと思っています。

 

サプールが言う「服が汚れるから争わない」は、ある一部の断片だと思っています。例えば大きな意味で彼らが世界平和を望んでいるとかいないとかそういうことではなく、オシャレに着飾り紳士的な精神性を磨く文化というのは、彼らが生きてきた歴史の中にこそ本質はあり、あのスタイルはあるべくして今もあるのです。

 

蝶ネクタイに魔法のような力はありません。しかし自宅で蝶ネクタイを装着してから今日参加するパーティーや何かしらの場に出かけていこうとする時に、いつもと違う自分がそこにいることに気付くのです。

自分の体にフィットしたスーツ、ハットやシューズや腕時計のバランス、姿勢やしぐさ。その瞬間に照明は灯されカメラは回り出し、自分が主人公の物語が動き出す。

そう、これは一人一人の内なる物語なんだと思います。そこでは誰かと争う必要もなく、魅力的なあなたは気心の知れた仲間や素敵な異性と最高の時間を過ごせばいい。そういう魅力を誰しも人間は持っているものなのです。

 

長い文章になってしまいましたが、ここまでがMetal Butterflyが誕生したきっかけのお話です。

お読み頂き本当にありがとうございました。アオキシゲユキでした。